ギランバレー症候群 Guillain-Barré syndrome: GBS

● 自己免疫応答によるpolyneuropathy:運動神経障害優位の自己免疫性末梢神経疾患
● 病理学的には炎症所見を伴う脱髄が主体であり、急性炎症性脱髄性多発ニューロパチー:AIDPとほぼ同義語であると考えられてきたが、近年電気生理学的ならびに組織学的検討により、従来のAIDPとは異なり一次的に末梢神経の軸索が障害される軸索障害型GBSの存在が知られるようになった。

1859年:Jean Baptiste Octave Landry de Thezillab(1826/10/10〜1865/10, フランスの内科医 パリで流行したコレラで死亡)がLandry麻痺(Landry-Guillain-Barre 症候群:左右対称性、上行性に進行する球麻痺)を記述した。
1864年:Louis-Stanislas Dumenil(1823〜1890, パリ、オテル・デュー病院)が急性ニューロパチー4例で病理的に末梢神経の異常を発見した
1879年:Ernst Viktor von Leyden(1832/4/20〜1910/10/5, ベルリンのシャリテ病院の神経科医)「多発性神経炎」という医学用語を使った。
1916年:Georges Charles Guillain(P 1876/3/3〜1961/7/29 フランスの神経学)、Jean-Alexandre Barré(P 1880/5/25〜1967/4/26)とAndré Strohl(P 1887/3/20〜1977/3/10 生理検査を担当した)が「細胞反応のない、髄液タンパク増加を伴った根神経炎症候群について」を発表した。第一次大戦の西部戦線攻防中にギランとバレーが勤務していた、フランス第六軍神経センターの軍人の2症例報告

● 稀な疾患であり、年間の発病率は10万人当たり1〜2人程度とされる。
● ギラン・バレー症候群には、急速に筋力が低下する急性型と筋力低下が徐々に起こる慢性型の2つのタイプがある。
● 髄鞘が傷害される脱髄型と、軸索そのものが傷害される軸索傷害型、両者が傷害される混合型に分類できる。
● 主に障害される運動神経の部位により臨床症状も異なり、外眼筋麻痺などを伴うMiller Fisher症候群、頚部・上腕部の脱力を主徴としたPCB(Pharyngeal-cervical-branchial variant of GBS)、Bickerstaff型脳幹脳炎など複数の亜型に分類される。
● 同様の自己免疫が原因で末梢神経の障害が起こる疾患にフィッシャー症候群(Fisher症候群)があり、外眼筋麻痺、失調、深部反射低下などがみられる。フィッシャー症候群は、ギラン・バレー症候群の亜型と考えられている。

脱髄型 acute inflammatory demyelinating polyneuropathy:AIDP
脱髄型は末梢神経伝導速度が低下する。
軸索型、軸索傷害型 acute motor axonal neuropathy:AMAN
軸索型では、末梢神経伝導速度が低下せず、M波の振幅低下が認められる。
混合型

[症状]

● ギラン・バレー症候群の約80%は、軽度の感染症、手術、予防接種後5日から3週間後に症状が現れ始める。
● 運動系の症状がメイン
 ○ 脱力、麻痺、腱反射の低下や消失
 ○ 初発症状は下肢の筋力低下から起こることが多い。両方の脚に突然現れた症状が、体幹部に向かい左右対称性に筋力低下や麻痺が上に向かって腕に広がっていく。
 ○ 手足の麻痺の程度は発病してから1〜2週以内にもっとひどくなる。
 ○ 半数の患者が顔面神経麻痺や外眼筋障害などにより、眼が閉じられなくなる。
 ○ 構音障害ー呂律が回らなくなる。
 ○ 嚥下障害などの球麻痺症状。
 ○ 5〜10%は、呼吸筋が非常に弱くなるため、人工呼吸器が必要になる。
● 感覚神経の障害
 ○ 3/4以上が感覚神経に傷害されて、手足の感覚鈍麻、痺れ、痛み。
 ○ ものが二重に見えたり、食事がむせたり、息苦しくなる。
● 自律神経障害を伴うことがある。
 ○ 非常に重症の場合、血圧の変動や心拍数の異常、その他の自律神経系の機能障害が起こる。

[原因]

● 自己抗体が運動神経の機能を障害して手足の筋肉が動かなくなる。
● 一般にカンピロバクター、サイトメガロウイルス、EBウイルス、マイコプラズマなどのウイルス、細菌の先行感染に引き続いて発症する。
● 感染源に対する抗体が多くの神経の軸索を取り巻いている脱髄を攻撃する自己免疫反応だと推定されている。
● 血清中の抗ガングリオシド抗体の上昇が半数程度に認められる。

[特徴]

● 男性に多い。どの年齢も発症する。

[治療]

● 単純血漿交換療法
● 免疫グロブリン大量注射
● 大原麗子さんは、1999年からギラン・バレー症候群と戦われていたが、2009年8月6日に亡くなられた。