慢性炎症性腸疾患-クローン病 Crohn’s disease:CD 

1904年:Antoni Lesniowski(ワルシャワの外科医)が症例を報告した。
1932年:Burrill Bernard Crohn(P 1884/7/13〜1983/7/29, ニューヨークの消化器内科医)と共同研究者のLeon GinzburgとGordon Oppenheimerがクローン病(終末回腸炎、限局性回腸炎 terminal ileitis)として症例を報告した。
● 主として若年者にみられる炎症性腸疾患IBD
● 主として口腔から肛門までの消化管全域に、非連続性の炎症および潰瘍を起こす原因不明の厚生労働省指定の特定疾患。
● それらの病変により腹痛や下痢、血便、体重減少などが生じる。
● 現在は遺伝的な素因を持ち、免疫系の異常(主としてマクロファージがTNFαを分泌して腸壁の正常細胞を傷害すること)と食餌因子などの環境的な因子が関係している可能性が示唆されている。

[症状]

● 症状は個人差が大きく、以下の症状が必ず発現するわけではない。
● 病変は消化管全域に起こりうるため、その症状は多岐にわたり、それらが断続的にみられることがある。
● 病変部位別

小腸型 小腸のみに病変がある。
大腸型 大腸のみに病変がある。
小腸・大腸型 小腸と大腸両方に病変がある。小腸・大腸型が多くを占めている。
● 病変タイプ別
 ○ 「狭窄型」と「穿孔型」に分類される。
 ○ 穿孔型のほうが重症であることが多い。
 ○ 重症例と軽症例では症状が大きく異なり、また炎症が激しい活動期(増悪期)では症状も激しく、炎症の落ち着いた緩解期では症状も落ち着く。
 ○ ただし狭窄、穿孔や瘻孔は非可逆性の病変であるため、必ずしも緩解期に症状が無くなるわけではない。
腹痛 ● 炎症やそれを繰り返すことによって起こる狭窄、また潰瘍によって高率でみられる。
● 重症例では腸閉塞、膿瘍、瘻孔や穿孔をきたすことがあるので重要な主訴のひとつであるといえる。
下痢 ● 一日に数回以上の下痢をきたす場合があり、QOLを損なうこともある。
● かなり高率でみられるが、小腸型の患者や場合によっては便秘をきたすこともある点に留意すべきである。
体重減少 ● 栄養素の吸収を役目とする小腸に病変が起こるため、特に小腸型では栄養不良によって体重の減少がみられることが多い。
● 若年層に高発するため、成長が阻害される恐れがある。
その他 ● 発熱や全身倦怠感といった症状も多い。また上部消化管に病変のある場合は下血が、下部消化管に病変のある場合では血便がみられることがある。その場合貧血をおこしていることもある。
合併症 ● 肛門部病変はかなり多くにみられ、難治性の痔ろうや裂肛から本疾患が判明する例もある。
● 他に関節炎、虹彩炎、壊疽性膿皮症や結節性紅斑などの腸管外合併症を伴うことがある。