● 膵臓腺房細胞の障害によって、消化酵素が流出する、外分泌組織の急性炎症。
● 中高年の男性に好発する。ほとんどが自然治癒するが、多臓器不全(MOF)やDICなどの重篤な合併症を来たすことがある。特に感染や血腫を合併した場合は外科手術の適応となる。
● アルコールの乱用や胆石などが原因で起きる病気。
● 慢性膵炎の急性再燃も含まれる。また、膵がんの比較的初期段階にも、急性膵炎が発症することもある。
● 急性膵炎は、激しい疼痛・悪心嘔吐を伴う。上腹部激痛、背部・左肩に放散痛。
● 膵には浮腫・出血・壊死などが現れ、しばしば膵周囲に血性滲出液が貯留する。
◇浮腫性膵炎 Edematous pancreatitis、Oedematous pancreatitis
○ 膵臓が腫れるだけで容易に回復する比較的軽症のもの
◇壊死性膵炎 Necrotizing pancreatitis
○ 膵臓や周囲に出血や壊死を起こし、急激に死に至ることがある。
○ 膵壊死はびまん性または限局性に膵実質が非可逆的壊死に陥ったもので、典型例では膵周囲脂肪組織の壊死を伴う。 臨床的には造影CTで膵実質に明らかな造影不良域が認められるもの
◇アルコール誘発性の急性膵炎 alcoholic pancreatitis
○ 独立行政法人理化学研究所、理研の御子チームと英国・リバプール大学との共同研究で、アルコール誘発性の急性膵炎の発症初期にIP3受容体がかかわっていることを発見した。
○ 膵臓を構成する細胞内で消化酵素が異常に活性化すると、膵臓を部分的に消化してしまい、その損傷によって炎症を起こして、急性膵炎を発症させる。
○ 膵臓内の酸素濃度が低下する際にアルコールと脂質を材料として脂肪酸エチルエステル(FAEE)が作られる。この時、FAEEは膵臓細胞内のカルシウム濃度を過剰に上昇させ、トリプシンなどの消化酵素を活性化させると考えられている。
○ 膵炎発症のきっかけとなる細胞内のカルシウム濃度上昇の第一段階は、アルコールの刺激によって、細胞内のカルシウム貯蔵庫に貯蔵されているカルシウムが細胞質へと放出されることで始まります。
○ 研究グループは、FAEE量が増大すると、カルシウムが特異的なカルシウム貯蔵庫から2型、3型IP3受容体を通って細胞質に放出されることを見いだした。
軽症膵炎 ○ |
中等症 ○ |
重症膵炎 ○ 重症の場合全身の血圧が極端に低下し死亡することもある。 ○ 重症急性膵炎では膵臓だけではなく、肺、腎臓、肝臓、消化管などの重要臓器にも障害を起こしたり(多臓器不全)、重篤な感染症を合併し、10%ほどの方が亡くなられる重い病気で、「難病」に指定されている。 ○ 重症で: 1.筋性防御(+) 2.膵臓壊死 3.多臓器障害(multiple organ failure:MOF)を呈する。 ○ 重症化した臓器不全を合併すると30%が死亡する。 ○ 救急診断では、 ● 苦痛に対する応急処置 ● 膵炎の確定診断(膵酵素、画像診断) ● 膵炎治療(膵酵素外薬、補液) ● 重傷度判定と集中治療室管理 などが必要である。 |
[急性膵炎の症状]
- 腹痛、背部痛(膵臓姿勢)
- 悪心、嘔吐
- 発熱
- 横断
- 腹水・胸水
- 腹部腫瘤
- 膵性脳症
- Cullen徴候、Grey Turner徴候
- 結節性効紅斑皮疹
[急性膵炎の原因]
- アルコール
- 胆石
- 膵損傷:外傷、手術
- 薬物:抗腫瘍薬(L-アスパラギナーゼなど)
副腎皮質ホルモン
利尿剤(フロセミドなど)
抗痙攣薬(バルプロ酸ナトリウム)
ルファ剤サ(サラゾスフファピミジンなど) - 毒物・毒素:有機リン、サルモネラ中毒など
- 代謝異常:副甲状腺機能亢進症、高脂血症
- 膵液流出障害:腫瘤、回虫迷入、Lemmel症候群、輸入脚症候群
- 家族性・発生異常:非癒合
- 感染:ウイルス(ムンブス、コクサッキー、サイトメガルウイルスなど)、マイコプラズマ
- 原因不明:特発性
[急性膵炎の痛み]
- 急性膵炎の腹痛発作は背部へ放散するのが特徴である。
- 患者は痛みをこらえるために、前屈起坐位をとることが多い(膵臓姿勢)。
- 膵は著しい圧痛を示し、抵抗や腫大を示す。
[急性膵炎の疼痛対策]
応急処置として、補液を開始するとともに、鎮痛薬と制吐薬を投与して患者の苦痛の緩和をはかりながら、平行して診断を進める。
[鎮痛薬]
中枢性鎮痛薬 | ペンタゾシン(ソセゴン®)・・・皮下注、筋注、静注 塩酸ブプレノルフィン(レペタン®)・・・筋注、静注 モルヒネ ペチジン(オスピスタン®)・・・皮下注、筋注、静注 |
NSAIDs | インドメタシンなど |
抗コリン薬 | 臭化ブチルスコポラミン(ブスコパン®) |