痛みを伴う精神と心理疾患・病態-身体表現性障害

● 「身体疾患を模倣する疾患(ただし詐病を除く)」
● 器質的な異常が見当たらないにもかかわらず、執拗に身体の異常を訴えるもの
● 2014年に改訂されたDSM–5では大きくその枠組みが変更された。その変化の背景には、「身体症状に対して医学的説明ができない」ことが定義から除外されたことが挙げられる。「医学的説明ができない」ことよりも、「苦痛を伴う身体症状と、それに対する異常な思考・感情・行動」に主眼が置かれたことである。
● 医学的に説明不能な身体症状 medically unexplained physical symptom: MUPS
 不定愁訴 unidentified complaints

☆DSM:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders
DSM—IVの痛みの項の担当者: Dr. Steven A. King [PubMed] ● 心因性の神経症と同じように、心理的な問題を体で表現している。
┏疼痛性障害 pain disorder(307.80):心理的要因と関連したもの
┣身体化障害 somatization disorder(300.81):多数の身体的愁訴を年余にわたって訴えるもの
┣心気症 hypochondriasis(300.7):重篤な病気にかかる恐怖にとらわれているもの
┣転換性障害 conversion disorder(300.11):随意運動または感覚機能が機能的に損なわれる
┗身体醜形障害 body dysmorphic disorder :自分の外見上の欠点を過剰に心配するもの
● 身体表現性障害の中で、「痛み」と関連があるものは「疼痛性障害」と「身体化障害」
☆DSM—Vでは、「疼痛性障害」などの「痛み」という用語を含む小分類はなくなった!
身体症状性障害(Somatic Symptom Disorder)のDSM-5の診断基準
A. 苦しいあるいは日常生活の著しい妨げとなっている一つまたはそれ以上の身体症状
B. 次の少なくとも一つによって明らかにされる身体症状または健康上の関心に関連する過剰な考え・感情あるいは行動
1. 症状の重症度に関する不適切で持続的な考え
2. 健康や症状に関する持続的な強度の不安
3. 過度の時間と労力をこのような症状や健康上の関心に費やす
C. どの身体症状も連続性に存在するわけではないが、身体症状がでる状況は持続性である。(典型的には6ヶ月以上)
疼痛の特定子
 顕著な痛みを伴うもの(かつての疼痛性障害)
持続性の特定子
持続性:重度の症状で障害が著しく、経過が長い(6ヶ月以上)
重症度の特定子
 軽 度:基準Bが1つ。
 中等度:基準Bが2つ以上。
 重 度:基準Bが2つ以上で、それに加えて、多様な身体的愁訴(あるいは重度の身体症状が1つ)
☆ICD-10 (International of classification of disease)

F45 身体表現性障害
F45.0 身体化障害
F45.10 鑑別不能型[分類困難な]身体表現性障害
F45.20 心気障害
F45.30 身体表現性自律神経機能不全
30 心臓および心血管系
.31 上部消化管
.32 下部消化管
.33 呼吸器系
.34 泌尿生殖器系
.38 他の器官あるいは系
F45.4 持続性身体表現性疼痛障害
F45.8 他の身体表現性障害
F45.9 身体表現性障害,特定不能のもの
● メカニズムはわかっていないが、脳内のセロトニン系神経ネットワークの機能不全と考えられている。