脊椎関連の痛み-椎間板ヘルニア-頚椎椎間板ヘルニア Cervical Disc Herniation

● 頸椎の椎間板が脊柱管内へ突出する結果、首から下に全身的に症状が現れる疾患
● 頸椎では、髄核、線維輪にも亀裂が生じ、椎間板と脊椎骨(椎体)の結合部である軟骨板にも亀裂が生じ、これが椎体からはがれて軟骨板、線維輪、髄核成分が混在した断片となり、それが脊柱管内に脱出する。
● 主な症状:項頸部の痛み、肩こり、背中の痛み、手から指にかけて走る痛みやしびれ、巧緻運動障害、歩行困難、排尿障害
● 30〜50代の男性に好発する。好発部位は C5-6, C6-7 の順である。

● 椎間板ヘルニアがあっても、痛みがある場合とない場合がある。
● 椎間板ヘルニアが確認されても、痛みの原因はヘルニアでない場合もある。
● 正常な脊髄神経は圧迫されても、痛みを生じさせない。
● 伸展、圧迫が生じている神経根に、炎症が生じると痛みが誘発される場合がある。

[症状]

● 症状は、まず項頸部痛や肩こりなどの局所の症状としてはじまり、その一部には上肢の神経根症状が加わる。さらに、一部に体幹や下肢の脊髄症状が加わる。
● 首筋から肩甲骨、あるいは首筋から腕を通って、親指や中指、小指へ激しい痛みが走る。痛みに伴って、ビリビリとした感じもある。
● 頸椎には運動制限がみられ、無理に動かすと痛みが誘発される。
● 椎間板ヘルニアの存在する高さによって、手指に発生するしびれや痛みの部位、触覚や痛覚などの知覚障害がおこる部位に、違いがみられる。
● 一般にヘルニアの生じた椎間板の高さは、尾側に行くにしたがって、症状は首から肩、腕の母指側、母指から小指、腕の小指側へと変わっていく。
● 変形性頸椎症よりも、痛みが激しい。

神経根症状
radiculopathy
● 後側方ヘルニアで生じる下位運動ニューロン障害であり、疼痛や不快感を訴える。
● デルマトームに一致した領域の障害
脊髄症状
myelopathy
● 後方正中ヘルニアで生じる上位運動ニューロン障害
● 両側の手足に麻痺やしびれ、脱力感が生じ、歩きにくくなり、手で物が持ちにくくなったりする。
● 下肢の腱反射(Hoffmann反射)の亢進やWarenberg反射などの病的反射が出現
● 神経因性膀胱
● 感覚障害や痙性麻痺を呈する。
局所症状 ● 頭痛、頸部痛、めまい、はきけ
障害神経根 運動障害 障害される反射 感覚障害
C3 横隔膜
C4 肋間筋
C5 三角筋、腕橈骨筋 上腕二頭筋腱反射 上腕外側
C6 手関節伸展 腕橈骨筋腱反射 前腕橈側から拇指
C7 手関節掌屈 上腕三頭筋腱反射 中指
C8 指屈曲 なし 前腕尺側
T1 上腕内側

[治療]

● 痛みが激しい急性増悪期は寝ていることで、頭を支えることによる頸椎の椎間板への負荷を減らす。
● 温めると症状が悪化するので、入浴はシャワー程度にしておく。
● マッサージや指圧は、患部に刺激を与えるので禁止。
● 草むしりやデスクワークなど下を向いての仕事や、天井の掃除など上を見上げての仕事も避けたい。
● 慢性期では、頸椎用のカラー装具をつけて、やはり局所の安静を図る。
● 牽引療法:持続牽引と間欠牽引。
● 徹底した保存的治療が奏効しない場合:手術療法。腰部椎間板ヘルニアと違って、頸部椎間板ヘルニアでは、脊髄の麻痺を放置すると、手術療法でも回復不能な障害を残してしまう。