脊椎関連の痛み

myelopathy
radiculopathy
radiculomyelopathy
椎間板性疼痛
椎間関節性疼痛
神経根痛
分離部痛
発生部位 疾 患 名
椎間板 ○ 椎間板ヘルニア /頸部・腰部
椎間関節 ○ 椎間関節症 /腰部
脊柱管 ○ 変形性脊椎症 /頸部・腰部
○ 脊柱管狭窄症 /頸部・腰部
○ 分離症 /腰椎
○ すべり症 /腰椎
椎体 ○ 脊椎腫瘍 ○ 骨粗鬆症  その他

■ 治療法

 ○ 保存療法

ブロック療法 薬物療法、理学療法
硬膜外ブロック
神経根ブロック
椎間板ブロック
椎間関節ブロック
経皮的椎間板摘出術
NSAIDs
筋弛緩剤
抗うつ薬
抗不安薬など
酵素注入療法)

 ○ 手術療法

減圧術 固定術
Love法
骨形成的椎弓術
椎弓切除術
レーザー治療
椎間板ヘルニア押し出し法
PLF
mini-ALF
DRIBS法
TLIF

脊椎骨の間をつなぐ靱帯と傍脊柱筋が脊柱を支えている。
これらの諸構造の中で痛みを感じやすいのは、脊椎骨骨膜、前縦靱帯、後縦靱帯、関節包、筋肉。

■神経根症状 radiculopathy

● 神経根の機械的変性と炎症によって誘発される、神経根痛を伴う症状の総称。
● 後根の障害が強い場合:デルマトームに一致した放散痛、しびれ感を伴う感覚鈍麻
● 前根の障害が強い場合:その支配域の運動障害、神経根麻痺、筋萎縮

頸肩腕痛 腰下肢痛
[症状] ・手足のしびれ感、感覚低下、脱力を主訴とする。
・側頸部から一側上肢への放散痛
[症状] ・主に、腰部の痛みやしびれ
・前屈制限が著明
・下肢の感覚低下や筋力低下。
・運動障害
・深部腱反射減弱
[疾患] ・腰部椎間板ヘルニア
・腰部脊柱管狭窄症
・腰椎分離症
・腰椎すべり症
・椎間関節症
・神経根嚢腫
・椎間板嚢腫(坐骨神経痛)

■脊髄症状 myelopathy

● 脊髄圧迫障害
● Long tract sign—白質の伝導路
 錐体症状、後索症状、脊髄視床路症状
● Segmental sign—障害レベルの灰白質の異常
● 純粋脊髄障害では、痛みを主訴としない。感覚障害も、支配領域と一致しない。

頸肩腕痛 腰下肢痛
[症状] ・上肢の巧緻運動障害、特にmyelopathy hand
・下肢の筋力低下や筋緊張の亢進に伴う歩行障害(特に階段の上り下りなどが困難になる)
・躯幹以下の感覚障害、下肢の件反射亢進と病的反射の出現
[症状] ・馬尾症候群による下肢痛
・脱力
・腱反射異常
・感覚障害
・膀胱直腸障害[疾患] ・腰部椎間板ヘルニア
・脊柱靱帯骨化症(特に胸椎黄色靱帯骨化症)
・骨粗鬆症に伴う圧迫骨折後の遅発麻痺
・胸髄くも膜嚢腫
・脊髄終糸症候群
・脊髄係留症候群

■radiculomyelopathy

● 神経根と脊髄圧迫の混合障害である。

頸肩腕痛 腰下肢痛
[症状] ・上肢の神経根症状に加え、下肢の遠位優位性知覚障害、痙性麻痺を生じる。
・神経根や前角細胞の圧迫は、障害脊髄レベルに反射弓をもつ腱反射を抑制し、同時に筋萎縮、筋力低下を示すが、その下位の腱反射はすべて亢進する。
・立位平衡機能も低下し、ロンベルグ徴候が高率にみられる。
椎間板性疼痛 discogenic pain 
退行性変性による疼痛

[椎間板性疼痛の発生機序]

● 椎間板線維輪表層、前縦靱帯、後縦靱帯およびその周囲組織には、椎骨洞神経と交感神経交通枝の神経終末が分布する。
● 通常は椎間板内、線維輪深層から髄核にかけては神経終末存在しないとされていたが、過度の負荷など椎間板(線維輪)に障害が生じると、線維輪の断裂や椎間板の変性が生じ、神経線維が椎間板の内部および椎間板の線維輪外層まで入り込んでくる。
● 椎間板内や線維輪外層を再支配した神経が、炎症に反応して、椎間板性腰痛の原因となる。
慢性腰痛 の40%程度は椎間板性疼痛が関与している。特にスポーツ選手はスポーツによる過度の繰り返しの負荷のため、椎間板が変性しやすく、最近は若年者でも椎間板性腰痛が多い。

椎間関節の変性による疼痛
椎間関節の肥厚、骨棘による疼痛

[発生機序]

椎間関節は椎体間の動きを制限し、軸圧を受ける動きがある。動きに対しては特に回旋を制限し、加重に対しては脊柱に対する加重の約16%を受けている。変性性変化が進行すると、加重が増加する。

神経根性疼痛 radicular pain
● 脊椎の加齢的変化あるいは脊椎腫瘍などによる脊髄神経後根の圧迫または破壊によって生ずる激しい神経痛様疼痛
● 脊髄後根の機械的変性と炎症によって誘発される、後根の支配領域に出る走る痛み。
 坐骨神経痛や腰痛の発現に深く関与している。

[症状]

● 片側性かつ限局性の放散痛、しびれ感を伴う感覚鈍麻、脱力などを主徴とする。
● 疼痛は傷害を受けた神経根レベルの皮膚分節にほぼ一致しており、障害部位診断の手がかりとなる。
● 安静臥床によっても軽快せず、咳、排便時のいきみなど、脊柱管内圧を上昇させるような原因で増強する。
● 疼痛部位と一致して感覚過敏をみとめることがあるが、神経痛と異なり、圧痛点はない。
● 神経根の伸展で疼痛を起こすラセーグ徴候が陽性になることが多い。

[発生機序]

・神経根は神経上膜は持たず、神経周膜は薄くて疎であるため、機械的な外力に弱く、浮腫を起こしやすい。
・また、椎間孔という狭い骨性間隙を通ることや、髄液中に浮かんでいることにより、脊柱の加齢性変化や髄液、髄膜の炎症、腫瘍性病変の影響を受けやすい。

腰部椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症の手術時に、伸展・圧迫・腫瘍がない部分で神経根を機械刺激しても、坐骨神経痛は再現されない。
● 馬尾を覆う硬膜、神経根袖、神経節、脊髄神経などの圧迫や伸展で痛みが再現できる。特に、脊髄後根神経節の圧迫は痛みを誘発しやすい。
● 神経根を圧迫部位よりも中枢側で麻酔すると、痛みは消失する。
● 脊髄神経根の圧迫は、神経線維の変形ばかりではなく、浮腫と微小循環障害による神経線維の機能異常をもたらす。
● 椎間板ヘルニアの場合、椎間円板髄核の分解産物による化学刺激と自己免疫反応が起こって、変形した椎間円板の周りに炎症性組織反応がみられる。この組織反応も、脊髄神経根の浮腫や微小循環障害を惹起する。
● 圧迫が続くと、浮腫が持続し、神経内膜の組織圧が恒久的に上昇する。
● 浮腫の持続に伴って、神経根を覆う皮膜に線維芽細胞が浸潤し、線維性組織を作る。その結果、神経線維の髄鞘形態が崩れて、脱髄が始まる。
● 圧迫がさらに続くと、神経内膜にも線維下が及んで、脱髄がさらに進行する。
● 脱髄に伴って、脊髄神経根支配領域の感覚運動機能が損なわれる。脱髄部から自発性興奮が出て、自発痛が起こる。

分離部痛
● 椎弓の上・下関節起間部における骨性の連続性が途絶えた状態

[発生機序]

分離により、上下椎間関節や下位椎間板への力学負荷が増加することによる痛みや筋・筋膜性の痛みのほか、分離椎弓の異常可能性による分離痛の痛みが推定されている。