恐怖回避モデルによる痛みの悪循環説

慢性疼痛の恐怖ー回避モデル fear-avoidance model
fear-avoidance model:1983年にLethemらが提唱し、Johan W. S. Vlaeyenらが研究を発展させている。
1)痛みへの恐怖 pain-related fearや再受傷の恐怖は患者の予後に重要な関わりを持つ。
人は身体に痛みを感じると、それを何らかの深刻な障害のサインなのではないかと考えて、多かれ少なかれ恐怖心を抱く。
2)痛みが起こることへの恐怖・不安から体を動かさないことで痛みがより強まることを示している。痛みに対する恐怖が扁桃体の過剰興奮を引き起こし、また扁桃体から前辺縁皮質:PLへのグルタミン酸作動性の投射はPL内のGABAニューロンを興奮させ、それがPLの錐体細胞を抑制する。PLからグルタミン酸作動性の投射は側坐核に至り、鎮痛に働く。
3)「痛みそのものよりも、痛みへの恐怖と我々が痛みに対して行うことへの恐怖が、より大きな障害を起こしている可能性がある。」 Gordon Waddell(1993)
受傷 injury して痛みを体験 pain experineceした場合、それに対して対峙するか、回避するかの2つの反応様式をとる。
fear-avoidance modelは、この恐怖と回避により、痛みの悪循環回路が成立し、慢性疼痛となる。

回避 avoidance
1)痛み体験を回避しようとすると、痛みに対する恐怖心は維持され、次第に増強していく。その結果身体への注意集中や過度のとらわれが形成される。
2)恐ろしい病気の情報 threatening illness information や否定的な感情 negative affectivity のために、痛みの破局化を生じさせ、恐怖心 pain-related fearは維持される。
3)神経障害性疼痛や線維筋痛症、非特異的腰痛患者では痛みの破局化思考の傾向が強い。
4)破局化思考により、痛みと関連した不眠や不安ー恐怖が惹起、増強される。その結果、患者は痛みへの注意を過度に集中させ、痛みを増強させる可能性のある日常生活をひかえようとする。avoidance hypervigilance
それらにより廃用障害やADLの低下、抑うつ傾向となり disuse depression disability、これらが転じて痛みへの意識がより強化される。
この恐怖心と回避の悪循環の中で痛みが維持されていく ・・・fear-avoidance model これらの反応や行動は、身体能力の低下と障害、疼痛の増強、抑うつ気分の出現につながる。
←→注意転換/過剰適応
並行して痛みを増強させる可能性のある行動をひかえようとする(回避行動)。

悪循環への対処:
対峙 confrontation:痛み体験に恐怖心がなく、対峙することができれば、回復 recoverする。
対処 coping:痛みを軽減するために、日常生活に来す支障を減らそうとし、痛みによって起こる精神的苦痛に歯止めをかけること。
痛みに対する態度や信念、受け止め方がコーピングに影響を与える。
警告や驚異として痛みを受け止めることが、情報を探し回ることにつながり、初回的サポート、問題解決策、医療機関を探し回り、破局化につながる。