虚偽性障害 factitious disorder

◇虚偽性障害(DSM-IV)

300.16 心理的徴候と症状の優勢なもの:心理的徴候と症状が臨床像で優位である場合
300.19 身体的徴候と症状の優位なもの:身体的徴候または症状が臨床像で優位である場合
300.19 心理的および身体的徴候と症状を併せ持つもの:心理的および身体的徴候または症状がともに存在しているが、いずれも臨床像で優位ではない場合

◇虚偽性障害の診断基準 (DSM-IV-TR)

A.身体的または心理的兆候または症状の意図的産出、またはねつ造。
B.その行動の動機は、病者の役割を演ずることにある。
C.行動の外的動機(詐病のような、経済的利得、法的責任の回避、または身体的健康の向上)が欠如している。病型に基づいてコード番号をつけよ

◇ICD-10

F68 他の成人の人格および行動の障害
F68.0 心理的理由による身体症状の発展
F68.1 症状あるいは能力低下の意図的産出あるいは偽装,身体的あるいは心理的なもの(虚偽性障害)
F68.8 他の特定の成人の人格および行動の障害

● 病状などについて虚偽を並べ立てる精神疾患の一種である。過去には詐病とされていたが、近来治療の対象とみなされるようになった。
● DSM-IVの医学分類では、心理的症状が優勢な虚偽性障害と身体的症状が優勢な虚偽性障害に二分される。
● 「心理的徴候と症状が優勢なもの」(DSM-IV:300.16)は、あらゆる同情をひくことができる精神病で起こりうる。精神疾患を疑わせる症状の意図的産出若しくは偽装をする。
● 「身体的徴候と症状が優勢なもの」(DSM-IV:300.19)は、腫瘍、なかなか治らない傷、痛み、低血糖、貧血、出血、けいれん、めまい、失神、嘔吐、下痢、原因不明の発熱などの症状を訴える事が多い。身体的症状が優勢な虚偽性障害の内、特に重症で慢性のものをミュンヒハウゼン症候群と呼ぶ。
● 「心理的および身体的徴候と症状を併せ持つもの」(DSM-IV:300.19)、心理的、身体的双方共に症状を訴えるがどちらが優勢か区別できないものである。分類上は、「身体的徴候と症状が優勢なもの」と同じに扱われる。
● 精神関係の相談に応じた患者の約1%が虚偽性障害と診断される。高度医療を要する医療機関における有病率は更に高くなると言われている。患者の比率は男性より女性が多いが、慢性型のミュンヒハウゼン症候群は男性に多いと言われている。

◇ミュンヒハウゼン症候群 Munchausen syndrome
・ 病気をねつ造したり、自己誘導的に病気となって病院をあちこち歩く病的虚言症で詐病とも言う。
・ 951年にRichard Alan John Asher(P 1912/4/3〜1969/4/25, イギリスの内分泌学者、血液学者)によって発見され命名された。
・ 「ほら吹き男爵」の異名を持ったドイツ貴族・Baron von Munchausen男爵(実在)の名前から付けられている。
◇代理ミュンヒハウゼン症候群 Munchausen Syndrome by Proxy (MSbP)
・ ミュンヒハウゼン症候群の変型。自分以外を傷つけ、周囲の関心を引き寄せる。
・ 症状が病気の本人(ほとんどは養育者である母親)には表れず、養育者の嘘や捏造されたデータにより、もっぱら代理である子どもに表れる。
・ 1977年Roy Meadow(イギリスの小児科医)が「子ども虐待の奥地: The hinterland of child abuse」と題した原著の中でMSBP: Munchausen syndrome by proxyと報告した。
◇『ほら吹き男爵の冒険 the baron of lies』
・ 原型は、Karl Friedrich Hieronymus Freiherr von Münchhausen(カール・フリードリッヒ・ヒエロニュムス 1720/5/11〜1797/2/22 ロイセン王国の軍人であり、狩猟家、冒険家)男爵が自身の冒険談として周囲に語ったほら話。
・ ミュンヒハウゼンの物語がはじめてまとまった形で出版されたのは1781年(著者は不明)である。
・ 1785年にRudolf Erich Raspe (1737〜1794)による英語版(Baron Munchhausen’s Narrative of his Marvellous Travels and Campaigns in Russia)が出版された。
・ 1786年に、August Bürger (1747〜1894) がラスペ版をドイツ語へと翻訳、加筆してドイツに逆輸入した。